気軽に自然を楽しみ心と体を健康に
三陸復興国立公園の種差海岸・階上岳地域は、多くの人に親しまれている場所です。国が計画的に保護している国立公園は、その目的に「国民の保健や休養」がうたわれています。 気軽に自然を楽しみ、心身ともに健康になるための国立公園の活用ついて、公益財団法人シルバーリハビリテーション協会の田中理事長が、今年4月に環境省八戸自然保護官事務所に着任した自然保護官(レンジャー)の西澤文華さんに伺いました。

田中 今年の春、初めて八戸に来たそうですね。この町の第一印象はいかがでしたか。

西澤 前任地が北海道釧路市で、八戸事務所に赴任するに当たってフェリーで降り立った時、「ずいぶん都会だな」と感じました。工業地帯が広がっていて、本当にここに国立公園があるのかな、と。

早朝に着いたので、そのまま車を走らせて種差海岸に向かう途中、それまで続いていた工業地帯が、突然、自然公園らしい景色に切り替わったことに驚きました。都市のすぐ近くに豊かな自然が残っているのは珍しいですね。

田中 都市機能と自然がうまく共存しているのが、八戸の魅力の一つだと思います。

自然保護官として、普段はどのような仕事をしているのですか。

西澤 国立公園の保護管理のため、許認可の申請処理をしたり、今ある自然をどうコンテンツ化して、皆さんに楽しんでもらうかを考えたりしています。当事務所は三陸復興国立公園のほか、洋野町までの「みちのく潮風トレイル」や、三沢市の仏沼の保護管理も担っています。地域の皆さんとお話をしながら、活用策や、もし何か問題があれば解決策を考える日々です。

トレイルに関しては、毎年4~6月に当事務所と関係市町村の方などと一緒に、管轄地域のルートを一通り歩いて、問題がないかを確認する「踏査」をやっています。私も今年初めて参加しました。

田中 国立公園の目的には「国民の保健や休養」があるそうですね。種差海岸でのお勧めの楽しみ方はありますか。

西澤 自然にはリフレッシュやリラックスに効果があると、学術的にも証明されています。種差海岸ならば、まず芝生を散歩して、そしてちょっと寝転がってみるのはいかがでしょうか。空が広く見えて、気持ちいいと思いますよ。目で見る景色はもちろん、土の香りを感じたり、鳥の鳴き声や波の音を聞いたりしながら、のんびりと自然を楽しむのもいいと思います。

田中 想像するだけでも、とても気持ちよさそうです。

種差海岸もルートに入っているトレイルは、全長千キロ以上もあるんですね。

西澤 その中でも八戸市ルートは高低差が少なく、足腰にあまり自信がない方でも歩きやすいです。JR八戸線の駅の近くを通るので、疲れたら列車で戻ることもできます。海岸、草花、芝生など、景色がころころ変わる区間もあり、面白いですよ。短距離でも十分ですので、気軽に歩いてみてほしいです。

田中 自然を感じながら歩くことで、リフレッシュさせながら足腰も丈夫にすることができますね。

西澤 階上岳もお勧めです。登山口から2時間くらいで登頂できますし、車で行ける大開平からだと、頂上まで30分程度で登れます。ただし、夏はアブが出るので、虫除けはしっかりと。靴は登山靴がベストですが、30分程度の登山であれば、底が厚くて滑りにくい運動靴であれば大丈夫です。雨がっぱも忘れないでくださいね。

田中 お話を聞いたら、私も歩いてみたくなりました。トレイルの管轄区間の中で、西澤さんが好きなポイントはどこでしょうか。

西澤 八戸市の葦毛崎展望台は景色も良く、少し遊歩道を歩くと季節の花々が迎えてくれるので、何度でも行きたくなります。また、階上町の小舟渡海岸は、草地と灯台と岩場が織り成す風景がとてもすてきです。

田中 この辺りに来る機会は何度もありましたが、自然に親しむことは心身の健康につながると知ったので、今後はそれを意識しながらもっと楽しむことができそうです。

西澤 環境省が作った「国立公園に、行ってみよう!」や「みちのく潮風トレイル」のサイトがあります。自然との付き合い方や国立公園のルールなどについて解説していますので、ぜひご覧ください。
自然は一度失われると、元には戻りません。花は見るだけにするなど基本的なマナーを守って、多くの皆さんに国立公園を楽しんでほしいです。

田中 今ある美しい自然を楽しみながら、次世代に引き継いでいくことも大切ですね。

本日はお忙しいところ、ありがとうございました。