きちんと知りたい子宮頸がんのこと
子宮頸がんの罹患者は20代から増え始め、特に30~50代で多くなります。 原因の多くはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染。 しかし若年時のHPVワクチン接種による予防効果は高く、検診での早期発見、治療により、亡くなることを防げるがんです。 HPVワクチンの効果や検診の重要性について、八戸西健診プラザ佐藤所長と大浦看護師長が八戸市立市民病院産科部長の葛西亜希子さんに伺いました。

子宮頸がんとはどのような病気なのでしょうか?

佐藤 子宮口付近に発生するがんで、ほとんどが性交渉によるHPV感染が原因です。しかし早期発見できれば高確率で完治できます。
 HPVは多くの女性が一生に一度は感染すると言われていますが、基本的には無症状のまま、免疫機能により体外に排出されます。しかし中には感染が持続し、異形成と呼ばれるがんの前段階を経て、子宮頸がんへと進行していく人もいます。

葛西 子宮頸がんは初期症状がほぼないので、定期的に検診を受けないと早期発見、早期治療が難しいです。しかし残念ながら、検診の受診率はまだまだ低いのが現状です。不正出血などの違和感があって医療機関を受診した時には、がんが進行していたケースを多数診てきました。
 子宮頸がんの発症者は他のがんと比較して若く、主に20~50代です。場合によっては子宮を摘出するケースもあります。妊娠するかしないかを自分で選ぶのではなく、妊娠できないという道を選ばざるを得なくなる、女性にとって人生が大きく変わってしまうこともある病気なのです。

八戸市立市民病院 産科部長
産婦人科医 葛西 亜希子さん
1975年八戸市出身。弘前大学医学部、同大大学院卒。2015年から八戸市立市民病院に勤務し、16年4月から現職。

大浦 八戸西健診プラザで子宮頸がん検診を受けている方の多くが40代以上です。しかし発症率が高い20~30代の皆さんにもっと受診してほしいと感じています。子宮がん検診の推奨頻度は20歳以上で2年に1度です。

近年、子宮頸がん予防のためのHPVワクチン接種が再び推奨されています。

葛西 2013年、報道によりHPVワクチンの副反応がクローズアップされたことは多くの皆さんの記憶にあると思います。その後、副反応とワクチンとの因果関係はないという調査結果に至りました。副反応より有効性の方が高いと厚生労働省が判断し、再びワクチン定期接種の勧奨をするようになったのです。
 対象は小学校6年~高校1年(12~16歳)の女子です。17歳未満でのワクチン接種により、子宮頸がんを88%予防できるというスウェーデンの報告もあります。

大浦 ワクチン接種を推奨していなかった期間に受けていない世代(1997~2007年度生まれ)は、24年度末まで「キャッチアップ接種」により無料で受けられます。自費で接種を受けると高額なので、対象であるうちに受けてほしいです。接種は6カ月間に3回、定められたスケジュールで行うので、キャッチアップ接種対象者は遅くとも今年9月末までに1回目を終える必要があります。

八戸西健診プラザ 所長
婦人科医 佐藤 顕
八戸西健診プラザ 看護部看護課
看護師長 大浦 美奈子

佐藤 しかしワクチンだけで子宮頸がんを予防するのは難しいので、1次予防はワクチン、2次予防として定期検診、そして定期検診で要精検の判定が出たら必ず医療機関を受診することが当たり前になってほしいです。

ワクチンだけではなく、検診も大事なのですね。

大浦 若い世代は特に、婦人科検診に対して恐怖感や羞恥心があるかもしれません。八戸西健診プラザの婦人科検診は女性専用フロアで行い、事前に問診票をしっかり書いていただければ、話しにくいことにもスムーズに対応できます。不安があれば看護師に話してもらえれば親身に対応しますので、心配せずに来ていただければと思います。また、忙しい方に向けて年2回、日曜日の子宮がん検診を行っています。

佐藤 かつて私が担当した患者さんで、要精検の通知を放置したままがんが進行し、子どもを残してあっという間に亡くなった人がいます。要精検となったら、すぐに医療機関を受診してほしいです。「大きな病気をしたことがないから大丈夫」という気持ちがあるかもしれません。しかしどんな人も、常に病気にさらされているのです。

葛西 「不正出血に気付いていたけど、親の介護で忙しかった」「私が入院すると子どもを学校に行かせられない」などという理由で検診や精検を受けず、がんが進行した状態で来院した患者さんたちもいました。大きな手術になり「後悔している」という声を聞いたこともあります。
 ワクチンや検診で予防できるがんは、子宮頸がんだけ。未来を考え、自身の体と向き合ってほしいですね。

―本日はお忙しいところ、ありがとうございました。