働き盛りの人たちの 健康づくりのために
青森県では、中小企業で働く多くの人が全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入しています。同協会は、健康保険に関する業務のほか、健診後の特定保健指導などを、各地域の健診機関、医療機関と連携しながら進めています。働き盛りの人たちの健康づくりに向けた取り組みについて、同協会青森支部企画総務部保健グループ長の保健師・大澤智佳子さんと八戸西健診プラザ健康推進課保健師長の葛西博子が意見を交わしました。

―労働者の健康づくりのための、それぞれの取り組みについて教えてください。

大澤 健康づくりの第一歩は、毎年の健診。病気の早期発見や生活習慣の改善に取り組むきっかけになります。協会けんぽでは、被保険者には、定期健診にがん検診と心電図を加えた生活習慣病予防健診、被扶養者には特定健診の費用補助をしています。生活習慣病予防健診は今年度から自己負担額が軽減され、上限額が5282円になりました。

青森支部加入者の健診データを見ると、喫煙率の高さに加え高血圧、糖尿病のリスクを抱えている人が多く、中でも八戸地区は、糖尿病のリスクがある人の割合が他地区より高い傾向にあります。ぜひ多くの人に、生活習慣病予防健診を利用してほしいです。

八戸西健診プラザ
健康推進課 保健師長
葛西 博子
全国健康保険協会青森支部
企画総務部保健グループ
グループ長 大澤 智佳子さん
青森市出身。財団法人社会保険健康事業財団を経て、2008年10月より現職。

葛西 協会けんぽからの委託を受け、私たちはメタボリックシンドロームに着目した特定健診と、その結果、生活習慣病発症リスクが高いと判定された人を対象にした特定保健指導を行っています。現在、健診の結果を当日に出し、すぐに指導できる体制が整っています。今月からオンライン対応を始めたので、巡回健診時も当日指導が可能です。

生活習慣病が悪化して入院となると、本人や家族も大変ですが、大切な従業員が抜けることで事業所にも負担がかかります。健康は何よりも大切です。一人一人が病気の予防を自分ごととして考えるため、そして事業所は従業員の健康を守るため、ぜひ特定保健指導を利用して、病気の予防につなげてほしいです。

―特定保健指導では、どのようなことをするのですか。

大澤 病気の発症や重症化を防ぐためには、健診を受けた後の行動こそが重要です。特定保健指導の目的は生活習慣の改善ですが、これまでやっていなかったことを急に始めるのは難しいので、まずは普段の食事や飲酒、喫煙、運動習慣などについて保健師や管理栄養士と話をし、一緒に「これならできる」という目標を設定します。例えば運動の場合、いきなりハードなスポーツを始めるのではなく、最初はバス停1つ分歩く、エレベーターではなく階段を使う、でも十分です。

葛西 特定保健指導をしていると、メディアを見て良かれと思ってやっている習慣が、逆効果になっているケースが多いです。果物は体に良いというイメージがありますが、食べ過ぎは良くありません。指導では、適正な食事量や栄養バランスについて、一人一人の食事や生活の状況に合わせてアドバイスします。

また、前年のデータと比較して血糖値や中性脂肪が上がっていた場合、保健師や管理栄養士は、日常生活で変わったことはないかを確認します。そうすると何かしら、対象者に心当たりが見つかります。それをきっかけに生活を見直すことで、改善につながるケースは多いです。

―労働人口の減少が続き、事業所にも従業員の健康を守ることが求められていますね。

大澤 従業員に健康で長く働いてもらうことは、これまで以上に重要になってきました。職場ぐるみで健康づくりを進めることで、生産性向上はもちろん、企業のイメージアップも期待できます。

当支部では加入企業に「健康宣言」の登録を呼び掛けています。内容は①健康診断の実施②特定保健指導の利用③再検査・治療の推奨④独自目標「わが社の健康プラン」の提出で、現在、県内の2千社弱が登録しています。独自目標は、運動や、たばこに関する項目が多く見られます。

登録企業が協会けんぽに従業員の健診結果を登録すると、自社の健康上の弱点を把握する「健康度診断」が届きます。それを生かし、事業所は自発的に健康づくりに取り組むことができます。健康宣言をすることで、職場の活性化や優秀な人材の確保にもつながると思います。

葛西 特定保健指導を利用していない事業所はまだ多いのが現状です。健診の数値を良くしたいのに、その原因やどのように取り組めばよいのかが分からない人も多いのではないでしょうか。保健師や管理栄養士と話すことで、見えてくることがあります。一人でも多くの人に利用してもらうよう事業所側にもアプローチして、健康のためのチャレンジを後押ししたいです。

―本日はありがとうございました。