介護予防に取り組み 長く元気に暮らそう
住み慣れた地域で長く暮らすためには、健康なうちから介護予防に取り組むことが大切です。八戸市が2020年に開設した介護予防センターは、介護予防や認知症予防のために、体操会や講話・交流会などの事業を展開しています。主な取り組みや利用者の変化について、所長の西塚明子さんと、委託を受けて同センターの事業を担っている当院の理学療法士・日向遥香、三上拓也が意見を交わしました。

センターでは多様な事業を行っています。どのような方が利用していますか。

西塚 八戸市内に住んでいる65歳以上の高齢者の数は、およそ7万人です。センターは、その中で介護保険を利用していない方を対象に、元気な状態を維持してもらうことを目的としています。開館当初は利用対象を市内在住者に絞っていましたが、昨年から八戸圏域の7町村の方も利用できるようになりました。

八戸西病院の理学療法士をはじめ、保健師、管理栄養士、作業療法士、介護支援専門員といった専門職が介護予防をサポートしています。特に参加者が多い事業は、毎週火曜~金曜に行っている体操会と、毎週火曜~木曜に行っている集いの場。参加者の大半が女性ですが、男性も大歓迎です。

八戸市福祉部 高齢福祉課 介護予防センター
所長 西塚明子さん
八戸市出身。保健師。八戸市立市民病院、健康づくり推進課、高齢福祉課地域包括支援センターを経て、2023年4月より現職。

日向 私たち理学療法士が担当する体操会は、ラジオ体操から始まって、その後にストレッチ、そしてスクワットや足上げなどの筋力トレーニングを行います。終わった時に「きつかった」と言いつつも、笑顔の方が多いですね。

三上 何もしなければ身体機能は落ちていきます。そのため「ずっと元気でいたい」との意識を持って、センターに体を動かしに来ている方が多いです。通っているうちに他の参加者と友達になるケースもあり、心身ともに良い影響があると感じています。

メディカルコート八戸西病院
リハビリテーション部 理学療法士
三上 拓也
メディカルコート八戸西病院
リハビリテーション部 理学療法士
日向 遥香

集いの場、体いきいき教室、家族介護教室など、役立つ講座もあります。

日向 集いの場は脳トレ、レクリエーションや各専門職による30分程度のミニ講話、体いきいき教室は2カ月に1回、体にまつわる講話をしています。昨年度の体いきいき教室では、フレイルの予防のために自宅でできる運動などについて講話しました。そして今年度は「歩く」をテーマに、姿勢や目線、歩幅、時間など、歩く時のポイントについて教えていて、皆さんメモを取りながら熱心に聞いてくれています。

三上 介護する人、される人双方に負担のかかりにくい介助方法や、便利な福祉用具など、在宅介護のポイントを学べる家族介護教室は、誰でも参加できる講座です。現時点で介護が必要ではなくても、知識を身に付けておくと、いざという時にスムーズに対応できると思います。

西塚 「ベッドや椅子に座らないとズボンをはけなかったけど、センターで運動をしているうちに、立ったままはけるようになった」と話してくれる利用者もいました。体の変化を実感すると、より一層楽しんで介護予防に取り組めると思います。

また、住宅改修などを行う際に、理学療法士が現地を訪問し、手すりを付ける場所や個数などについてアドバイスを行っています。より良い住環境を整えることで、住み慣れた自宅での生活を続けられるよう支援しています。

やはり元気なうちに、健康意識を持って行動することは大切ですね。

日向 来館する皆さんはとても意欲的で、ここで学んだことを自身の生活に合うようにアレンジして実践しているようです。また、リピーターの方が新たに友達を連れて来ることもあります。センターを利用することで、地域住民にどんどん介護予防の輪が広がっていけばいいと思います。

三上 脳トレも運動も、一人でやることは可能です。しかし、センターでほかの参加者と関わることで交流が生まれるので、刺激になります。

また、理学療法士は、けがをした後のリハビリだけではなく、けがをしないための対策を教えることもできます。私たちが持つ知識を、これからもより多くの皆さんに発信し、地域住民の方の健康に貢献したいです。

西塚 センターはコロナ禍の中で供用を開始したので、3年間「利用してほしいけれど、密になってはいけない」という、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるような状態でした。そのため、行動制限が撤廃された今が、本当の意味でのスタートと言えます。

センターの利用は無料です。来館して体を動かして健康を維持し、将来のために知識を学び、住み慣れた地域で元気に暮らす高齢者が増えることを願っています。

本日はありがとうございました。