大切な自分の目と長く付き合うために
「小さい文字が見えにくい」「まばたきをしないとよく見えない」。近年、健康な目と高度な視機能障害との中間状態を表す「アイフレイル」(視機能の衰え)という概念が広がりつつあります。アイフレイルからつながる目の病気や、全身の健康との関係性、視機能を守るために一人一人ができる対処法などについて、メディカルコート八戸西病院非常勤眼科医の谷藤典子さんと八戸西健診プラザの邨谷ちひろ、滝澤恵美が意見を交わしました。

―「アイフレイル」について教えてください。

谷藤 アイフレイルは、「目が疲れやすい」「目やにが出る」「見えにくくて夜の運転が怖い」など、加齢に伴う目の機能低下のことです。重大な目の病気が隠れている場合があり、その中でも特に多いのが緑内障です。

目と脳をつなぐ視神経に障害が起き、徐々に視野が欠けていく緑内障は40歳以上の5%がかかっている身近な疾患で、最終的には失明に至ります。一度欠けてしまった視野は元には戻りません。進行をできる限り遅らせることを目的とした治療を行います。

緑内障は視力検査だけでは分からず、自覚症状がないままゆっくり進行します。目に異変を感じたら眼科で眼底検査や視野検査を受け、取り返しがつかない状態になることを防いでほしいです。

メディカルコート八戸西病院 非常勤眼科医
谷藤 典子さん
盛岡市出身。岩手医科大学医学部卒。京都府立医大、ジョンズホプキンス大学ウィルマー眼科研究所およびシンシナティ大学眼科でのリサーチフェローなどを経て、2024年から谷藤眼科医院(盛岡市)院長。

―健診や人間ドックでも目の検査ができますね。

邨谷 一般健診のオプションや人間ドックで眼底、眼圧検査が受けられます。そして協会けんぽは今年度から、付加健診(眼底・腹部超音波・肺機能・詳細な血液検査)に対する補助の対象年齢を、40歳から70歳までの5歳刻みに拡大しました。人間ドックは一般健診よりも検査項目が多く、体の異常を総合的に調べられるので、有所見率が高くなる40歳以上の人にお薦めです。

昨年度、八戸西健診プラザにおける人間ドック受診者の眼底検査結果を見ると、要精検および治療中(D、E判定)は2割。40歳を超えると一気に増加します。その中の4割弱は緑内障が疑われる所見がありました。

また、眼底出血も少なくありません。これは糖尿病を放置していたり、治療中でも血糖値をコントロールできていなかったりする人に多いです。要精検対象者には必ず医療機関を受診するよう勧奨しています。

谷藤 緑内障発見のために眼底検査は非常に重要です。眼科では視野検査など、より精密な検査を行い、視神経の形状を解析して診断します。また、眼底の血管は体内で唯一、直接観察することができる血管です。目の状態だけではなく、高血圧や動脈硬化、糖尿病など、全身の状態も映し出します。

滝澤 視力検査はもちろん、眼底、眼圧検査もぜひ受けてほしいですね。先ほど谷藤先生が話していたように、眼底検査では全身の血管の状態が分かりますし、目に風を当てて計測する眼圧検査も、緑内障発見の一助になります。

八戸西健診プラザ 健診課
事後支援課長 邨谷 ちひろ
八戸西健診プラザ 検査科
科長 滝澤 恵美

―大切な目を守るために、私たちができることは何でしょうか。

滝澤 まずは定期健診。そして40歳以上の方は、ぜひ眼底検査を含めた人間ドックを受けましょう。要精検が出たら医療機関を受診するのはもちろんですが、もし異常がなくてもそこで終わりではなく、その後何らかの変化が起こることを見据えて、受診を継続することが大切です。

邨谷 パソコンを使っている人は、眼精疲労からくるストレスや肩凝りといった症状が出てきますので、適度な休憩を取ることと、正しい姿勢を保つことが必要です。

また、スマートフォンを見る時にうつむき姿勢だと首に負荷がかかり、頭に血液が流れにくくなります。そうすると眼圧が上がり視神経が圧迫されて緑内障を引き起こす原因になるので、スマホと目線が同じ高さになるように意識しましょう。

谷藤 アイフレイルを放置すると転倒リスクが増えたり、車の運転ができなくなったりと日常生活が制限され、結果的に健康寿命が短くなります。目の検査と適切な治療を通してQOV(見え方の質、クオリティオブビジョン)を保ち、人生100年時代を元気に過ごしてほしいですね。

そのために、日本眼科啓発会議のアイフレイル啓発公式サイトでは、アイフレイルに関する10項目のチェックリストと、六つのセルフチェックツールを公開しています。大切な目とこれからも長く付き合っていくために、ぜひ役立てて下さい。

―本日はお忙しいところ、ありがとうございました。