八戸市民病院開設「患者サポートセンター」
八戸市立市民病院は2023年6月、医師、看護師、薬剤師ら専門職が連携し、入院から退院まで患者を支援する総合窓口「患者サポートセンター」を開設。治療に関する説明や入退院手続きなどを1カ所に集約することで、より円滑なサービスを提供できるようになりました。センターを開設した背景や八戸地域の医療連携について、当院の武者晃永病院長が同病院の水野豊院長に伺いました。

地域医療連携で役割分担

武者 八戸地域では市民病院が基幹病院となり、当院を含めた地域の医療機関と役割分担をする地域医療連携が確立されています。

水野 当院は地域の医療機関から紹介された高度急性期疾患、特殊疾患、救急などの患者さんを入院治療しています。西病院とは月に30人程度紹介し合っている状況です。

武者 当院は市民病院での治療後、病状を安定させながら、地域に戻れるようリハビリや生活指導をする役割を担っています。市民病院は、当院の患者さんの急変時に臨機応変に対応してくれるので、非常に助かっています。

水野 西病院はリハビリ施設もスタッフ数も充実しています。当院で急性期治療とリハビリをして状態が安定したら、今度は社会に戻るためのリハビリをしっかりとできる心強い存在だと感じています。

メディカルコート八戸西病院
病院長
武者 晃永
八戸市立市民病院 院長兼患者サポートセンター所長
水野 豊さん
1963年仙台市出身。東北大学医学部卒。2002年から八戸市立市民病院に勤務し、外科医として腎移植手術などに取り組んだ。17年副院長兼診療局長に就任。23年4月から現職

患者さんや職員の負担軽減

武者 患者サポートセンターは昨年6月に開設されました。どのような業務を行っているのでしょうか。

水野 医師、看護師、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカー、精神科ソーシャルワーカー、事務職員らが連携し、患者さんの入院から退院までをサポートする総合窓口です。以前は別々に行っていた治療計画や服薬、入院生活の説明はもちろん、医療費や社会福祉制度の説明などもワンストップで行うことで、患者さんの負担を減らすメリットがあります。また、入院前に患者さんの情報をセンターでまとめ、病棟看護師ら関係者に共有することで、スムーズな入院治療につながります。

武者 患者さんはもちろん、職員の負担軽減にもつながりますね。開設に当たりモデルケースはあったのですか。

水野 2019年、当院の地域医療連携室の看護師から提案され、私を含めた職員数人が患者サポートセンターの先駆けである長野県の佐久医療センターで講習を受けました。それを基に20年から当院の外科患者さんへの入退院支援を試験的に実施し、昨年、ほぼ全ての入院患者さんへの運用を開始しました。センター内にはプライバシーに配慮した個室14室を設置しているので、困り事なども安心して相談することができます。

武者 検査の予約など、診療科ごとに手順が異なる業務もあると思います。画一化するのは大変ではないですか。

水野 おっしゃる通りで、完全に統一できていればいいのですが、まだ到達していないのが実情です。スタートしたばかりなので、一つの科をモデルケースにし、そこから各科に徐々に広げていくような取り組みをしています。

武者 そしてセンターの中には、がん患者さんや家族を支える「がん相談支援センター」もあります。

水野 病状や暮らしへの影響、仕事との両立、治療費のことなど、がんに関するさまざまな不安を解消するため、専門の研修を受けた看護師やソーシャルワーカーが相談に応じています。予約不要、匿名、無料で、当院の患者さんではない方も相談可能ですし、電話での対応もしています。徐々に認知されてきて、最近は月に50件程度の相談を受けています。

武者 がん患者さんは不安が大きいので、気軽に相談できる場所はとても大切ですね。

メリット享受できる形に

武者 サポートセンターの今後の展望を教えてください。

水野 開設がゴールではなく、地域に貢献するために進化させるのが課題です。まだセンターを完全に活用し切れていないとも感じているので、診療科間の手続きの標準化も含め、もっとメリットを享受できる形になればと思います。また、地域医療連携室がセンターの中で一緒に動いています。職種、病棟、外来間のコミュニケーションを深め、患者さんの受け渡しなどをもっと円滑にしたいです。

武者 各医療機関との情報のやり取りも標準化できれば、地域医療連携が非常にスムーズに進むと思います。

水野 セキュリティ面などの課題はありますが、いずれは連携を結ぶ医療機関の間で、クラウドでカルテを共有できるようになれば理想的です。

武者 まずは八戸地域という範囲で、少しずつでも実現するといいですね。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました。