潜在看護師の現場復帰に向けて
人口減少や少子高齢化、働き方改革などが進む中、 看護師を確保するには、看護師免許を持ちながらも現在看護職に就いていない「潜在看護師」の現場復帰が鍵になります。 潜在看護師が、再び現場で働き続けられるための支援や教育について、青森県看護協会の柾谷京子会長、メディカルコート八戸西病院の母良田郁子看護部長、八戸西健診プラザ健診科の大浦美奈子看護師長が意見を交わしました。

―潜在看護師の復職に向けて、どのようなアプローチをしていますか。

柾谷 県看護協会が運営するナースセンターは、看護師確保のための業務を行う組織です。潜在看護師の復職支援も担っていて、最新の医療技術に関する研修や、求人情報の提供をしています。

少子高齢化に伴い、現役人口は今後どんどん減っていきます。看護師も例外ではなく、今や9人に1人が60歳以上の「プラチナナース」。短時間勤務や担当業務の特化など、プラチナナースを活用して看護師不足を補っている医療機関はかなり多いです。

母良田 西病院では、潜在看護師就労支援講習会を11月に開催します。
看護師の活躍の場は多様です。当グループの中でも、病院だけではなく、健診施設、介護老人保健施設や、教育の場である看護学校などもあります。潜在看護師にさまざまな種類の施設を見学してもらうことで、「この施設だったら復帰できる」と思ってほしいですね。一人でも多くの潜在看護師が再び活躍できるよう後押しするのが、私たち現役世代の役割だと思っています。

大浦 当グループでは昨秋から今春にかけて「八戸版新型コロナワクチン職域接種」の委託業務を行っていました。通常業務をしながら1日当たり600~千人に接種するため、看護職の求人システム「eナースセンター」を通して約20人の潜在看護師を採用し、無事に終えることができました。

結婚をきっかけに退職したばかりの人、家庭で子育てや介護をしている人、管理職として定年まで勤め上げた人など、多様な経歴を持つ皆さんとチームを組んで一つの仕事ができたことは、とても貴重な経験です。また、この業務をきっかけに西健診プラザに2名、西病院に1名の採用につながりました。

―ブランクがあると、現場復帰に不安を感じる人もいるのではないでしょうか。

柾谷 電子カルテや注射、AEDなど、進化した医療技術にハードルを感じている潜在看護師は多いです。そのためナースセンターでは、eラーニングで最新技術を学べる、復職支援研修の紹介もしています。無料で受講できるので、ぜひ多くの人に利用してほしいですね。

母良田 西病院では、朝または夕方の介助、採血、リハビリなど特定の業務だけを担当する方や、短時間だけの方も歓迎しています。受け入れ側がどれだけ柔軟な対応ができるかが、潜在看護師の現場復帰の鍵になると思います。

大浦 健診プラザの看護師のほとんどが、夜勤はできないという背景があり、業務内容や勤務時間に対する線引きははっきりとしています。

また、たとえブランクがあっても、学び直しをすることで身に付けた感覚は戻るので、勇気を持って現場復帰ができるよう背中を押してあげたいです。

―生き生きと働き続けられる環境づくりも大切ですね。

母良田 看護師は誰もが、一人前になるためにたくさん苦労をしています。今は看護職から離れている人も、かつては患者さんの力になりたいと思ったはずです。ブランクのある看護師を一人にせず温かく支えていくことが必要だとスタッフ間で話し合っています。

大浦 「私より年上だから、これくらいはできるだろう」と思わず、周りが気軽に声を掛けられるような職場風土が大切だと感じています。一人一人が勤務できる時間や業務の幅は小さくでも、たくさんの人が持ち寄って補完し合うことで、大きな力になりますね。

柾谷 ワクチン接種に応募した潜在看護師は、「世の中が大変な状況なので、少しでも貢献したい」と言ってエントリーしてくれた人がほとんど。看護師も基本的に「人の役に立ちたい」というマインドがあるのです。
そのために、離職した看護職の皆さんにぜひナースセンターに届け出をしてもらい、看護を必要とする多くの皆さんに手を差し伸べられるようにしたいと思います。